自然素材と一言に言っても、意外とむずかしい。
何でもとりあえず使えば良いというものでもなく、その素材の持つ力を発揮するためには、
その素材のことをよく理解する必要がある。
例えば、漆喰。
最近では、塗り壁を選択するユーザーさんも多いと思うが、その材料の特性を売り手側から
ちゃんと説明を受けているのだろうか?と思う。
外壁での漆喰の選択。
漆喰は強アルカリ性で自浄効果もあり、優れた素材なのは間違いない。
でも、雨、風などの影響を受けないということはない。
昔から、外壁には漆喰が用いられてきた。
それは長持ちし、数々の歴史的建造物にも塗られている。
ここで大切なのは、長持ちするのには一定の条件があるということ。
昔の日本家屋と今の主流の家屋の違いは何か。
大きな違いは、軒の深さではないだろうか。
少々の雨では、窓を開けていても雨が室内に入らない程度の軒の出。
直接雨が当たるのを防ぎ、外壁の劣化を抑える。
また、軒は夏場の日射を遮ることもできる。
夏場に、直接室内に日が入るのを抑え、過ごしやすい空間をつくる。
日本の家は夏を旨とすべし。
吉田兼好の「徒然草」にも書かれている。
冷房もない時代に、暑い夏をやり過ごすために、昔の家には軒の出は絶対条件だった。
軒を出すのには理由があり、その理由の一つに、外壁の保護もあると思う。
だが、最近の家は軒が無い家も多い。
見た目を重視したものであろうが、それならそれで、漆喰などの塗り壁という選択は
ふさわしくないと思う。
先人の知恵には驚かされることがたくさんあるが、昔ながらの良いところを積極的に取り
入れながらも、現代版に進化させることが家づくりには大切だと思う。
私は、素材の持ち味を十分に発揮できる家づくりを提案して行きたい。